チクングニア熱など、その他の蚊による感染症リスクデング熱以外の、蚊による感染症リスク

蚊の基礎知識を紹介しています。蚊の種類によって分布地域や吸血時間帯も異なり、注意が必要です。

蚊の基礎知識

媒介する蚊 外見の違い 国内分布地域 吸血時間帯 疾患
ヒトスジシマカ
青森県以南の地域 日中(朝方~夕方) デング熱
チクングニア熱
黄熱
ウエストナイル熱
日本脳炎
ネッタイシマカ
生息していない 日中
(特に早朝・夕暮れ前)
デング熱
チクングニア熱
黄熱
ウエストナイル熱
コガタアカイエカ
日本各地 夜間 日本脳炎
ウエストナイル熱
ハマダラカ
(シナハマダラカ・コガタハマダラカ)
シナハマダラカ
シナハマダラカ:日本各地
コガタハマダラカ:宮古・八重山諸島
夜間 マラリア
(シナハマダラカ:三日熱)
(コガタハマダラカ:熱帯熱)
アカイエカ
北海道から九州 夜間中心 日本脳炎
ウエストナイル熱
資料●蚊の種類と感染症について
出典:国立感染研究所(画像)

デング熱のほか、チクングニア熱も媒介するヒトスジシマカは、東北より南に分布し、主に住宅地の水たまりがある箇所で発生します。ウエストナイル熱を媒介するアカイエカも同様です。

また、コガタアカイエカは日本脳炎とウエストナイル熱を媒介します。この蚊は主に本州より南に分布し、田、池、沼、水たまりに発生します。小型で、夜間にヒトや家畜を刺します。

比較的軽症の三日熱マラリアを媒介するシナハマダラカは日本全国に広く分布し、重症の熱帯熱マラリアを媒介するコガタハマダラカは沖縄の宮古・八重山諸島に分布しています。これらの蚊は、山の中や郊外の草むらばかりでなく、代々木公園のような都市部の公園でも発生する可能性は十分にあります。

蚊が媒介する感染症の主なものをあげました。ネッタイシマカやヒトスジシマカは、デング熱のほかにチクングニア熱も媒介することから新たな流行が懸念されています。

主な感染症の特徴

疾患名 発生地域 潜伏期間 主な症状 備考
チクングニア熱 アフリカ、南アジア、東南アジア 3~7日 急性の発熱と関節痛、発しん 歴史が浅く、デング熱より症状が強いと言われる。国内での感染や流行はないが、海外で感染した輸入症例が報告されている。
日本脳炎 日本、中国、東南アジア、南アジア 7~14日 発熱、頭痛、おう吐、意識障害 感染しても日本脳炎を発病するのは100~1,000人に1人程度であり、大多数は無症状に終わる。
黄熱 アフリカ、南米 3~6日 発熱、頭痛、筋肉痛嘔吐、黄疸 特異的治療法はなく、対症療法のみ。ただし、黄熱ワクチンで予防が可能である。
マラリア 東南アジア、アフリカ、中南米 7~40日 発熱、悪寒、倦怠感、頭痛、関節痛 マラリア原虫の種類によって、熱帯熱マラリア、三日熱マラリア、四日熱マラリア、卵形マラリアに分類される。
ウエストナイル熱 アフリカ、ヨーロッパ、西アジア、米国 2~14日 発熱、頭痛、筋肉痛、発しん 日本国内での感染例はないが、近年ヨーロッパやアメリカなど西半球で流行が拡大している。
資料●主な蚊媒介感染症
出典:厚生労働省検疫所 「感染症についての情報」 を中心に作成

国内での感染について、今後注意したい感染症はチクングニア熱です。国内での症例は少ないものの、媒体蚊はデング熱と同じであり、症状はデング熱よりも強いと言われています。東南アジアやインドで流行しています。またマラリアは、日本では流行していないものの、媒介するハマダラカは国内に生息しています。どの感染症も、日本で流行する可能性はゼロではありません。

年間で最も人を殺している生物第1位「蚊」

人間にとって一番恐ろしい生物とは「蚊」です。地球上には人を襲う猛獣やサメがいますが、それよりもたくさん人を殺しているのが蚊です。蚊が原因で年間72万5000人もの命が失われているというデータがあります。

蚊自体は、毒は持っていませんし、攻撃力もありません。しかし、人の血を吸うことで、デング熱をはじめ、マラリア、日本脳炎、ウエストナイル脳炎などの感染症を媒介します。中でも、マラリアの被害は大きく、アフリカでは1分間に1人の子供が亡くなっていると言われています。蚊は現代人にとって大きな脅威であることを認識したいものです。